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不器用なふたり トリプルバトル7

مؤلف: 相沢蒼依
last update تاريخ النشر: 2026-01-25 05:39:58

「理由なんてそんなの、わざわざヤクザとお知り合いになんて、普通はなりたくないだろ」

笹川の問いかけに宮本は傾げていた首を元に戻し、抱きしめている橋本を見つめる。

「たまたま、陽さんのお父さんがヤクザだった。ご兄弟もその道の人だということですよね。俺は別にかまわないです」

「雅輝、怖くないのか? 俺が笹川さんと逢うだけで、すげぇ怖がっていただろ」

(顔を青くして、思いっきり怯えていたというのに――)

「ハッキリ言って怖いです。でも陽さんは陽さんだから。もし何かあったら、一緒に逃げればいいかなって」

逃げると言った宮本を、笹川は眉間に深いしわを作って声をかける。

「逃げるだと?」

その顔は何を言ってるんだという疑問と軽蔑が入り混じったものに、橋本の目に映った。

「はい。危ないなって思ったら、陽さんを連れて車で逃げます。どんなオンボロ車でも、絶対に逃げきれる自信はありますので」

「ぷぷっ、アハハハ!」

宮本としては恋人を守るために、格好よく宣言したのかもしれない。だが詳しい事情を知らない笹川の態度と、熱くなっている宮本の温度差が両極端すぎて、どうしても笑わずにはいられなかった。

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  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング18

    嬉しげに瞳を細めながら、なおも独り言をブツブツつぶやく宮本の隣で、橋本は額に手を当てて、がっくり俯く。「野木沢悪いな。雅輝は興奮してひとりの世界に入っちまうと、現実に戻ってくるまでにちょっと時間がかかってさ」「わかってる。ネクタイピンのときもそうだったし」「うわぁ、それは迷惑かけたな」「全然。むしろ感謝してる。こうして素直なリアクションを見ることができるのは、創作者冥利に尽きると思ってね。なんていうのかな、初心に戻れる感覚だった」 野木沢は照れくさそうな表情で、橋本に説明する。穏やかなその様子に、安堵のため息をついた。「そうか……」「この仕事をしていてよかったって、心の底から思えた。だから橋本も宮本様に負けないくらいに、僕の目の前で喜んでほしいんだけどな?」 ショーケースから身を乗り出して橋本を見上げた野木沢に、俯かせていた顔をあげながら、顎を引いて距離をとった。「これでも喜んでるって。すげぇ嬉しいんだけど」「そんな言葉だけじゃ、僕は満足できない。現物を作るのには、お客様からの期待するエネルギーが必要なんだよ」「陽さん、もっと喜ばなきゃ駄目です。野木沢さんの創作意欲を高めないと、俺たちの指輪が完成しません!」 突如会話に乱入してきた宮本を見て、橋本は思いっきり顔を歪めた。鼻の穴を大きくしながら自分に迫る恋人の迫力は、正直困り果てるもので、煙に巻くにも手がかかると思わされた。「ちょっ、めんどくさい注文つけるな……」「俺たちの指輪の出来具合にかかってるんですよ。ねぇ野木沢さん」「そうだそうだ。橋本の喜んでるところをちゃんと見ないと、僕は手を抜く可能性だってあるかも?」 宮本と野木沢のふたりに要求された橋本は、辟易しながらも両手をあげて作り笑いをし、喜んでいるところをアピールして、無事にコンプリートしたのだった。

  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング17

    まじまじと自分を直視する宮本を見、野木沢は小さなため息をついて、考えをまとめながら口を開く。「ステアリングホイール、つまりハンドルは車の舵を切る大事な部品でしょ。それってふたりにピッタリだと思ってね。それと指輪のモチーフにしやすいことも、理由のひとつかな。よぉく見ないと、ただの指輪にしか見えないし」「なるほどな。よく見ないとわからないふたりの秘密みたいで、すげぇいいと思う。なっ、雅輝?」「…………」「雅輝?」 橋本はだんまりを決め込む宮本の肩に手をやり、軽く揺さぶった。それでも野木沢を見たまま、微動だにしない。「おい、雅輝」「やっぱりすごいです、野木沢さんは!」 さきほどよりも瞳を見開き、キラキラしたまなざしを向ける。その様子を目の当たりにした瞬間、橋本は嫌な予感がよぎった。 以前なんの気なしに、宮本が好きそうな二次元のキャラを褒めた際に見せた感じと非常に似ていたため、テンションが爆上がりすることに思い至ったからだった。「雅輝、落ち着け。ここは外なんだから、あまり興奮するな」「これが興奮せずにいられますか。野木沢さんの天才すぎる才能を、こんな俺たちのために使わせたんですよ」 必死に宥めようとする橋本に、宮本はそんなの知ったこっちゃないといった感じで、声を大にした。「陽さんとのお揃いの指輪がステアリングホイールなんて、本当に夢みたい。実際の物を見ていないのに、指輪をしているところを想像できちゃうのが、このイラストのお蔭なんでしょうね。すごいなぁ」 わざわざ書類を手に取り、嬉しそうに眺める宮本に、野木沢はお腹を抱えて笑いだした。「野木沢?」「橋本がたじろいでるところ、はじめて見た。一筋縄ではいかないってところが、宮本様の魅力のひとつなのかもしれないね」「まぁな……。最初は俺が主導権を握っていたんだけどさ。気がついたら思いっきり翻弄されて、手に負えないって感じなんだ」 宮本について話し込むふたりを無視して、相変わらず書類に見入る。「陽さんのネクタイピンを注文したときも、俺の想像以上の物を作ってくれたし、野木沢さんに頼んで本当によかった」

  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング16

     顔を真っ赤にしつつ、震える声で豪語した宮本に、野木沢は乾いた声色で訊ねる。「だって橋本はタチなのに……。僕とは違って男らしくて、見るからに抱く方でしょ。抱かれてるなんて、アイツはそんなヤツじゃ――」「陽さんは言ったんです。好きなヤツに抱かれるのは、悪いもんじゃないって。俺はそんな気持ちに報いるために、全力で陽さんを抱きました」 宮本がここ一番で両手を握りしめた瞬間に、扉の開く音が店内に響いた。「おっ、珍しく雅輝が先に来てる」 ふわりと微笑んだ橋本が入ってくるのを、野木沢と一緒に眺める。注がれるふたりの視線から、そこはかとなく漂う空気を読みとり、「あー、なんかタイミングが悪かったか」なんて呟いた。「いらっしゃい。タイミングはばっちりだと思うよ。ね、宮本様?」「へっ?」「たった今、橋本が抱かれてるって話を、聞いたところだったんだ」 野木沢はショーケースに頬杖をついて、ニヤニヤしながら橋本を見つめる。宮本はなんと言っていいかわからなくて、あたふたしつつ、ふたりの顔を交互に見やった。「ああ、抱かれてる。信じられないだろ?」「僕を抱いてた頃の橋本なら信じられないけど、今の橋本ならありえそうだなぁって」 ふふふと意味深に笑ってしゃがみ込み、奥から書類らしきものを取り出した。「信じてくれるのか?」「信じるもなにも、宮本様が言ったんだ。あんなふうに熱意を込めて言ったことを信じないとか、普通はありえないと思うな」 野木沢はふたりに書類を見せるためにショーケースの上に置き、指先でトントン叩いた。そこにあったものとは――。「陽さん……」「これにしてくれたのか」 雁首揃えて見入ってしまったそれには、指輪のデザインが描かれていた。正面や斜め上、内側まで細かくイラストが描き込まれいて、仕事の丁寧さを表すものだった。「橋本に車関連で宮本様とお付き合いがはじまったから、それをモチーフにと言われた時点で、いろいろ考えた。車の部品で丸いものと言えば、最初に思いつくのはタイヤ。他にもライトやマフラーだったり、エンジンルーム内の部品に至るまで徹底的に調べつくしたけど、指輪にするモチーフには似合わなかった」 胸の前に腕を組み、得意げに笑う野木沢を、橋本と一緒に凝視した。「どうして野木沢さんは、ステアリングホイールを選んだんですか?」

  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング15

    *** 一週間後、野木沢から連絡が入ったので、都合のいい日に店に向かうことにした。「あーあ、陽さんよりも早くお店に着いちゃった……」 中をこっそり覗き見ると、いつも早く到着している橋本が来ておらず、宮本は微妙な表情をキープしたまま店内に入った。「宮本様、いらっしゃいませ!」 営業スマイル全開の野木沢に見つめられるだけで、この間のやり取りを思い出し、背中に嫌な汗が噴き出す。「ど、どうもです」 後頭部をバリバリ掻きながら、きまり悪そうにしている宮本を、野木沢は微笑みを唇に湛えて眺めた。「宮本様とやりあったあと、次の日に橋本が店に来たんです」「えっ?」 そんな話をひとことも聞いていなかったこともあり、宮本はビックリするしかなかった。「僕の目の前で、橋本にものすごく惚気られましてね。「アイツ以外ほしくない。アイツじゃないと俺はもう駄目なくらい、とことん惚れ込んでる」なぁんてデレた顔で言われたせいで、あえなく玉砕させられました」「陽さんがそんなことを……」 実際に聞いてみたかったと、思わずにはいられない。どんな顔でどんな声色で、それを野木沢に告げたのか――二次元についての想像力には自信があったけれど、橋本に関することは、からっきしダメなのを自覚しているので、残念でならなかった。「僕らはもうあの頃には戻れないんだって、改めて思いました。年数が経ちすぎたせいでしょうね。橋本の考え方が変わっていたし」「確かに学生時代と社会人じゃ、いろいろ変わって当然かと……」「でも橋本の好みは変わってないと、思っていたんだけどなぁ。そこのところがすっごく残念でした」「まぁ確かに、陽さん面食いですし」「何気に、自分はいい男だって言ってます?」 笑いながら野木沢に突っ込まれ、宮本は思いっきりあたふたした。「ちちちっ、違いますっ! 俺はいい男じゃないですけど……」「けど?」 語尾の上がった独特な問いかけに、ごくりと唾を飲み込んだ。アレを言うならこのタイミングだと考え、両手を強く握りしめる。「えっと、むぅ…あのですね俺が陽さんを抱いているので、もう離れられないっていうか」「えっ?」 宮本のセリフに、野木沢は目を丸くした。まじまじと宮本を凝視し、そのまま固まる。「ぉ、おお俺が陽さんを抱いてるんですっ。なにか疑問はありますか?」

  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング14

    目尻に笑い皺を作って微笑んだ橋本を見て、野木沢も同じような表情を作った。「学生時代の橋本なら、喜んで飛びついたでしょ?」「そうだな。だけど時間が経ちすぎた上に、雅輝が相手じゃ分が悪かったわけか」 野木沢は橋本の言葉に、笑いながら額に手を当てる。「橋本がとことん惚れた相手じゃ、無理なわけだよね」「ああ……」「同性婚するからそれの証しに、ペアリングを作ろうと思ったんだ?」「そのつもりさ。だから野木沢の店に来てるんだけど。作ってくれないのか?」 即答したセリフを聞いた途端に、力なくその場にしゃがみ込む野木沢を見て、橋本はカラカラ笑い声を立てた。「わかりやすいリアクション、サンキューな」「ノックダウンさせられたよ、参った……。それで、どんなデザインをご所望ですか、お客様」 野木沢はよいしょと呟きながら、やっと立ち上がった。橋本に見せる顔には、すでに悲壮感が漂っておらず、一番最初に店で見た商売人としての表情がそこにあった。その切り替えの早さに、すごいなと思わずにはいられない。「野木沢、おまえ――」「どんなものにするか、早く言ってほしいんだけど。好きだった男のペアリングを作る、僕の気持ちを考えてくれよ」 腰に手を当てて自分を見上げる野木沢の迫力は、橋本がたじろいでしまうものだった。「わ、悪い。えっと雅輝と出逢ったきっかけが車関連だったから、それをモチーフにしてほしいなと思って」「了解。すっごいデザイン考えて、橋本からお金をふんだくってやるよ。できたら宮本様に連絡するから、楽しみに待ってて」 あからさますぎる笑顔を振りまいたと思ったら、さっさと店の中に消える。「ありがと、野木沢。楽しみに待ってる」 橋本はあえて追いかけず、扉に向かって囁いたのだった。

  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング13

    ジャケットのポケットから名刺を取り出して、お客様に渡すように野木沢に見せた。嬉しさを頬に滲ませながら受け取る様子に、橋本は真顔でぴしゃりと言い放つ。「ただし友達としてな。それ以上は勘弁してくれ」「橋本……」「雅輝と付き合う前までは、ワンナイトラブとか躰だけの関係がへっちゃらだった。片想いしてたせいでそういうコトして、現実から目を逸らしてた」「宮本様に出逢って、橋本は変わったのか」「アイツ、俺が片想いしてるの知ってるくせに、告白してきてさ。玉砕覚悟以前の問題だろ、それって。なのに真正面から俺に告ってきた、すげぇヤツなんだ。まんま価値観を変えさせられたって感じ」 橋本は宮本にプレゼントされたネクタイピンに触れながら、切なげに微笑む。そんな様子を目の当たりにして、野木沢はいいようのない表情になった。「片想いを覆すほどの強い気持ちを、打ち明けられたってわけか……」「見た目の良さそうな相手と深く関わっていくうちに人柄を理解して、さらに好きになっていった過程が、ガラッと変えられたんだ。一気に恋に落ちた気分だったさ」 ひょいと肩を竦めてから、橋本は野木沢に視線を注ぐ。「橋本、おまえ……」 その視線からほとばしるような熱情を感じたせいで、野木沢はひゅっと息を飲んだ。「アイツ以外ほしくない。アイツじゃないと俺はもう駄目なくらい、とことん惚れ込んでる。だから野木沢、おまえの想いには答えられない」 注がれる視線から逃れるために、首を垂れたのを確認したので、橋本は店を仰ぎ見た。有名ブランド店が並んでいるというのに、そんな中にあっても見劣りしない野木沢の店をすごいなと思いながら、しげしげと眺めた。「橋本と宮本様を見て、わかってたのにな。もう昔には戻れないって」「わかってたのに、わざわざ雅輝に絡むなんて。バカだよ野木沢」「だって好きだった橋本に再会したせいで、ぶわっと再燃しちゃったからね。あの頃の気持ちが」 あーあと言いながら店のドアに背を預けた野木沢を、橋本は無言のまま見つめる。「橋本ってば昔よりもさらに格好良くなってるし、惹かれずにはいられなかったんだって。どうしても欲しくなっちゃったんだ。だからあのときと同じように、迫ろうってなってね」「恋人のいる俺の貞操観念を試そうとしたのかよ。怖いな」

  • BL小説短編集   陽さんΣ(oДo;;)4

    「陽さん、俺の顔が陽さんになってない?」「寝ぼけてるのかよ、雅輝は雅輝だって」「良かった~。もとに戻ったんだ」 触れられている橋本の手をぎゅっと握りしめながら、思う存分歓喜した。 喜び勇んだ宮本に呆れながら説明を求めた橋本に、夢の中の出来事をぽつりぽつりと話して聞かせる。「俺になった気分は、そんなに最悪だったのかよ?」 喋っているうちに落ち着いた宮本を、布団に入り直した橋本が腕枕をして抱きしめた。密着する素肌から伝わってくる熱が、とても心地よく感じた。「最初は喜んだよ。『わーい、陽さんになっちゃった』っていう調子で小躍りしたあとに、隣で寝てる自分の姿を見て、思いっきりショックだ

    last updateآخر تحديث : 2026-03-31
  • BL小説短編集   トリプルバトル裏2

    恋人の宮本にまで喧嘩を吹っかけていた展開を聞き、橋本に逢ったときに菓子折りつけて謝罪しなければと、テーブルに置いてるスケジュール帳に手を伸ばした。 橋本に逢う週のページを開き、※高級菓子折りつきでハイヤーに乗り込む。という注意書きをしておく。もちろん黒い手帳の預かり料も、自動的に込みになる。「それって昴さんが、いろんなヤツと喧嘩がしたいだけでしょ。気に食わない相手なら、立てなくなるくらいに打ちのめすくせに」『さすがは昇さん、俺のことをよく分かっていらっしゃる』「つまり、橋本さんと宮本のことが気に入ったんだね」 これまでの会話から察することができた、笹川の心情を言い当ててやる。『

    last updateآخر تحديث : 2026-03-30
  • BL小説短編集   ラヴ・メッセージ

    ※これは橋本が江藤と宮本弟に逢った日の夜におこなった、出張先にいる雅輝と熱いメッセージを交わした内容です 『雅輝、ただいま。今、大丈夫か?』「陽さんおかえりなさい。あとは寝るだけなんで大丈夫です。今日もお仕事お疲れさまでした」『お疲れ!さっきシャワー浴びて、ノンアルコールビールを飲んでるとこ。お前こそ、長距離の運転疲れていないか?』「そこまで長距離じゃないから平気。俺はオレンジジュースで乾杯」『カンパイ!あのさ今日の午前中、ハイヤーを走らせていたら、江藤ちんと雅輝の弟に偶然会った』「マジで!よく見つけられたね」『スーツ着てるし、平日の午前中なんて絶対に仕事中だろ。それなのにデー

    last updateآخر تحديث : 2026-03-30
  • BL小説短編集   不器用なふたり トリプルバトル6

    笹川に太刀打ちできないことくらい嫌というほど分かっていたが、手を出さずにはいられなかった。 顔面に向かって、ジャブの連続を浴びせる。しかし打ち込んだすべての拳を易々と受け止められた挙句に、疎かになっていた足元を掬われ、前のめりの状態で派手にすっ転んだ。「陽さんっ!」 しかも土下座に似た形で転んだため、目の前の無様な姿をどんな気持ちで宮本が見ているだろうか。そのことを考えただけで、悔しくてならなかった。(ちくしょう、俺は好きな男すら守れないのか――) 下唇を噛みしめながら起き上がろうとした瞬間に、笹川の足が横っ面を踏みつけて、橋本を動けないように固定する。「やめてください。貴方の

    last updateآخر تحديث : 2026-03-29
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